これが、夜間ではなく日中何かに集中したり緊張した状況の際に、上下の歯を無意識に軽く接触させる不良習癖として東京医科歯科大学の顎関節治療外来で多く見られたことにより、木野准教授を中心に提唱された経緯がありました。
Tooth Contacting Habitの日本語訳なんですが、これのナニが問題かって言うと厄介なことに良くないとされる習癖で有りながら御本人がまったく気が付いてない状態だったりするのです。
マウスピース矯正
聞き慣れない単語かと思うのですが、今 歯科界ではこの歯列接触癖(TCH)というのが悩ましい問題点になっています。日中何かに集中したり、緊張した状況下で無意識に上下の歯をわずかにクッと軽く接触させる癖のことで、『かみしめ癖』や『くいしばり癖』とも呼ばれたりします。
これが、夜間ではなく日中何かに集中したり緊張した状況の際に、上下の歯を無意識に軽く接触させる不良習癖として東京医科歯科大学の顎関節治療外来で多く見られたことにより、木野准教授を中心に提唱された経緯がありました。
Tooth Contacting Habitの日本語訳なんですが、これのナニが問題かって言うと厄介なことに良くないとされる習癖で有りながら御本人がまったく気が付いてない状態だったりするのです。
一般的に我々人間は、リラックス状態の安静時には上下の歯は触れ合わずに2ミリ前後離れている(安静空隙)のが正常です。一日のウチで発音や、食物を噛み砕いたりする咀嚼(そしゃく)、そしてゴックンとする嚥下(えんげ)などの時だけ歯は触れ合うように出来ています。
口を開けたまま唾液をゴックンとしようとすると、結構大変ですよね。ってことは無意識にではあるけど嚥下時には歯を接触させていることがお解りになるはずです。
本来我々は、上の歯と下の歯が接触すると反射的に離そうとするように出来ています。その為に一般的な歯の接触時間は1日24時間で20分以下、正確に言うと約17~18分なんだそうです。これは食事に要する時間という話ではなく、カチッカチッと歯が触れ合ってる瞬間の総合計時間なのでトータルしてもそのぐらいだそうです。
それ以外に上下の歯が無意識のうちに接触することで様々な不調をきたすのがTCHなのです。
集中している時や緊張している時などに、無意識に歯にグッと力を込めてしまうような方は注意が必要です。
本来、リラックスしてる状態の時には、唇は閉じてるけれど上下の歯は少しだけ隙間が空いて、舌は上顎の天井部分に触れていて鼻呼吸・・・が正解です。換言すれば僅かに上下の歯が接触してたら、もうそれだけで顎の筋肉は緊張状態にあるってことになります。
これは意外と簡単で、TCHの診断は歯の付け根にくさび状の欠損部があったり、それに伴い知覚過敏症状があったり、または下記の様なポイントが観察されれば特にTCHが強いと考えられます。明瞭ならば間違いないのですが微妙な方もいらっしゃるので・・・厄介なんです。
モチロン、普通の方には見られません。咬筋(頬)が噛むことで頬粘膜が歯の側面に密着し、しかもそれが長い時間(時には30分以上も)継続されることで圧痕が残ることになります。
むしろこちらの写真の方が理解されやすいかもしれません。お口を閉じた状態で覗き込んでみた際に上下の歯列にピッタリな状態で痕跡が残ってはおりませんでしょうか。
本来なら丸みを帯びてるはずの舌ですが、TCHによって噛み締められてる時には歯列に押しつけられてる状態が長く続きますので、歯の形に沿ってギザギザになってしまいます。
舌の下の舌骨と肩の肩甲骨は肩甲舌骨筋で繋がってますので、TCHの方に肩こり症状が多く見られるのはそれが理由です。
上下の歯を軽く接触させることであっても、その歯の根っこと支えてくれてる顎の骨の隙間にある歯根膜には瞬間的ではなく常なる神経の圧迫や血流障害が生じてしまいます。
それに伴い歯に知覚過敏症状が出てみたり、咬合痛が生じたり、歯が動揺したり浮いたように感じられたりします。最終的には歯周病の進行を引き起こしてしまうという厄介なトラブルに発展してしまいます。(泣)
同時にこのTCHを長時間に渡り続けてしまう事で、耳の直前にある顎関節の圧迫を常に引き起こし、血流障害・関節痛をも引き起こします。
それに加えて、軽い閉口状態であっても収縮した顎の閉口筋群(口を閉じる働きの筋肉)はモチロンのことながら首や肩のあらゆる筋肉達は常なる緊張状態に追い込まれてしまいますので、それが筋肉の疲労・血流障害を来たし筋肉のコリとなって出現するのです。
TCHは、何かに集中していたり生活の中で過緊張状態が求められる時に行われてしまうことが多いようです。
また、NHKの番組『ためしてガッテン!』などでも取り上げられていたのですが、パソコンやスマホの操作中が酷いようで、驚いたことにほぼずっと噛みっ放しの状況が検証されていて視聴していてこっちが驚きました。
運転だのPC操作だの何らかのことに長時間没頭してる瞬間がリスク大となってしまうようです。お仕事などに絡んでそれが常態化することで、TCH状態に陥ってしまう日常習慣を身に付けてしまうことが想像されます。
このTCHと夜間の歯ぎしりとの関係も取り沙汰されています。TCHを意識して軽減させることにより、コントロールが不能な夜間無意識下の歯ぎしりも軽減される・・・・とも言われています。
歯を接触させていて、ナニもトラブルが生じないなら構わないのですが、それが困ったことに様々なトラブルを引き起こしてしまうのです。(泣)
理想的には普段のリラックスしてる時には『唇は閉じていて、上下の歯は触れ合わずに、舌は上顎に軽く触れ、鼻で呼吸』が宜しいかと思うのですが、つまりは上下の歯が軽くであっても触れてるってことは顎の筋肉は緊張状態にあるということになってしまいます。 リラックスしてるのに体の一部にピシッと力が入ってるなんて・・・可笑しいですもんね。
歯ぎしりにも通じる諸症状でもあるのですが、下記の様な症状があったりされませんでしょうか?
TCHや歯ぎしりにより、歯だけでなく歯ぐきや顎にも大きな負担がかかります。そうなると歯周組織にも悪影響を及ぼし、結果的に歯周病が悪化しやすいです。
噛み締めるには頬(咬筋)などの諸筋群を用います。それらの筋肉は首・肩・こめかみ・側頭部などの筋肉にも繋がってますから連動して頭痛や肩こりといった症状が出てしまいます。
TCH(噛み締め)は、顎関節にも大きな負担がかかります。それほど重くは無いけれど常に荷物を持ってる状態と同じですから、長時間の連続負荷は顎関節症の原因となり得ます。
TCHを治すだけでも顎関節症の症状がなくなった・軽くなったという患者さんは実際に大勢いらっしゃいます。
歯はわずかな5gの力であっても、それが持続的な力であれば動いてしまいます。それが矯正治療の原理でもあります。通常は舌・頬・口唇、そして咬合の絶妙なるバランスで綺麗に揃いますが、TCHで咬合だけが過剰になると歯並びが悪くなります。
歯周病で骨植が緩んでる方は歯の移動が顕著になりがちです。
持続的なTCHの力や歯ぎしりの力がかかると、上顎の真ん中や下顎の内側の骨が隆起(外骨症)したりします。お気付きでない方が多いのですが、病的なモノではないですけどモコモコとしたふくらみがありませんでしょうか? 普通は無いです。
顎角というアゴの角・・・いわゆるエラの部分、ここは噛むための筋肉(咬筋)の付着部位です。TCHや歯ぎしりはそこに常に負荷を掛けます。例えるなら咬筋の筋トレをずっとしているような状態と言えますでしょうか。鍛えてるのですから下顎もしっかりとした骨になりますのでエラが張って来ます。
いかがでしょうか? 次の二枚のレントゲン写真の赤矢印の方よりも黄色矢印の方のほうが鍛えられていてガッチリした顎の骨に見えませんでしょうか?
TCHによって歯に過剰な力が掛かり続けると、歯の表面を覆うエナメル質が砕けたり剥がれてきます。そうすると本来なら見えない敏感な象牙質が露出することになり、ブラッシング時や冷たいモノを口に含んだ時などに知覚の過敏状態が生じるようになります。
TCHや歯ぎしりで歯などに負荷がかかり続けると、被せ物や仮歯なども取れやすくなります。金属疲労という表現はおかしいかもしれませんが実際に金属が割れたりもしますし、厄介なのはインプラントをしている方は固定のネジが折れたりすることまであります。(泣)
無理もありません。TCHの特徴は頬の内側の圧痕です。噛みやすい状態になってるので頻繁に気の毒な想いをされてしまうようです。(泣)
TCHの原因として良く言われることに、上記の理由以外に取り沙汰されるのはやはりストレスが多いようです。現代社会に生きる我々です。完璧なるノンストレス状態は有り得ないかとは思いますが、心身共にストレスフリーの日常を過ごしたいようには思います。
ストレス以外の原因として挙げられるのは逆流性食道炎に罹患されてる方もダメなようです。これは食べたモノや胃液が文字通りに逆流する疾患ですが、胃酸を中和するために唾液を飲み込もうとして無意識に噛み締めるためとされています。
TCHは、まずは御自身で気がつくことがとても大切です。そこで推奨される方法として、10~20分ごとに目に入るような、たとえばパソコンやテレビのリモコンやトイレの電気のスイッチ、クルマのハンドルや女性でしたら炊飯器の蓋などに『歯を離す』と書いた付箋などを貼ってみるのが宜しいようです。
四六時中意識しようとすれば逆にそれがストレスになりかねませんので、それが目に入った時にだけ歯が当たっていないかチェックすることをまずは習慣づけます。
これを続けることで歯が触れ合ってしまう時間が減り、徐々にではありますが『歯が触れたら離す習慣』が身につき改善の方向に向かうと言われています。
加えて少しうつむいたような首を下向きにし続ける姿勢(スマホ姿勢)も宜しくありません。難しいことではありますが昔から『姿勢を正す』のはやはり間違いではなかったんでしょうね。
よくマウスピースによる対処も有益とは言われますが、確かに歯にヒビが入ったり摩耗したりすることからは守れますが、噛み締めに伴う顎関節や咬筋群を守ることは出来ませんので根本的原因解決には至れないようです。
理事長・院長
SAKAI NAOKI
1980年 福島県立磐城高等学校卒業
1988年 東北大学歯学部卒業
1993年 酒井歯科医院開院
2020年 医療法人SDC設立 理事長就任
日本臨床歯科CADCAM学会
日本顎咬合学会
日本口育協会
日本歯科医師会
国際歯周内科学研究会
日本床矯正研究会
ドライマウス研究会
船井総研・矯正特化型歯科経営研究会
妻と子供3人(一女二男)、長男は2019年から歯科医師
『努力は人を裏切らない』