保険の「銀歯」が高くなったのは、材料の金銀パラジウム合金(金パラ)が大きく値上がりしたためです。国は金属に頼らない治療を進めていて、保険で作れる白い被せ物「CAD/CAM冠」の対象を少しずつ広げてきました。2026年6月の改定では、奥歯にも使いやすくなっています。ただし、銀歯がなくなったわけではなく、今も保険で選べます。この記事では、銀歯が高くなった理由と、これからの被せ物の選び方を、2013年からセレックでCAD/CAM冠に取り組んできた酒井歯科医院の院長がお伝えします。
こんにちは。いわき市中央台の酒井歯科医院です。
ここ数年、「銀歯の治療費が前より高くなった気がする」「保険でも白い歯にできるって本当?」という声を、患者さんからよくお聞きするようになりました。
銀歯の材料「金パラ」とは
保険の銀歯は、「金銀パラジウム合金」(通称:金パラ)という金属でできています。金・銀・パラジウム・銅などを混ぜ合わせた合金で、丈夫で、薄く作っても強さを保てるため、長いあいだ保険の被せ物や詰め物に使われてきました。
このうちパラジウムは、自動車の排気ガスをきれいにする部品などにも欠かせない、産出量の少ない金属です。そのため、世界の情勢や工業での需要によって、値段が大きく動きやすいという特徴があります。


なぜ銀歯が高くなったのか
ここ十数年、世界的な資源価格の上昇や、地政学的な不安、工業での需要の増加などが重なり、金パラの値段は大きく上がってきました。
保険で決められた値段も、上がり続けています
保険で使う金パラの値段(告示価格)は、市場の値段に合わせて国が定期的に見直しています。たとえば1gあたりの告示価格は、2025年12月の3,802円から、2026年3月には4,779円に引き上げられました。
それでも、歯科医院が実際に仕入れる値段は、2026年1月時点で1gあたり5,600円ほどと、保険の値段を上回っています。銀歯を1本作るごとに、材料代の一部を歯科医院が持ち出す「逆ザヤ」の状態が続いているのです。
窓口負担が増えても、歯科医院がもうかっているわけではありません
保険診療では、材料の値段も治療の値段も、すべて国が決めています。窓口負担が増えたのは、材料の値上がり分が保険の値段に上乗せされたためで、歯科医院の利益が増えたわけではありません。誤解されやすいところなので、ぜひ知っておいていただきたい点です。
国が進める「脱金属」と、CAD/CAM冠
こうした金属の値上がりを受けて、厚生労働省は、金属に頼らない治療を保険で使いやすくする方向に進んでいます。その中心が、保険で作れる白い被せ物「CAD/CAM冠(キャドキャムかん)」です。
CAD/CAM冠とは
CAD/CAM冠は、セラミックの粒を混ぜたプラスチック(レジン)のかたまりを、コンピューターで設計し、機械で削り出して作る白い被せ物です。設計をCAD、削り出しをCAMといいます。

保険で使える歯が広がってきました
CAD/CAM冠が保険で使えるようになったのは2014年で、はじめは小臼歯(前から4番目と5番目の歯)だけでした。その後、前歯や大臼歯にも少しずつ広がり、2026年6月の改定では、大臼歯に使うときの「かみ合わせの支え」の条件がなくなりました。今では、前歯から奥歯まで、ほとんどの歯で保険の白い被せ物を選べます。
同じ改定で、お口の中をスキャナーで読み取る「光学印象」も、条件を満たした医院では、CAD/CAM冠で保険が使えるようになりました。金属のかわりになる被せ物としては、ほかにもチタン冠や、PEEK(ピーク)冠という材料も保険で使われています。
保険の銀歯は、なくなるの?
「銀歯はもうなくなるの?」と聞かれることがありますが、なくなってはいません。金パラの銀歯も、チタン冠も、今も保険で作ることができます。当院でも、歯の状態やご希望に合わせて、銀歯・チタン冠・CAD/CAM冠のどれもお作りしています。
奥歯で強い力がかかる場所や、歯を削れる量が少ない場合などは、金属のほうが向いていることもあります。白い歯か金属か、それぞれの良い点と注意点をご説明したうえで、一緒に選んでいきます。
CAD/CAM冠の良いところと、注意したいところ
良いところ
- 白いので、口を開けたときに目立ちにくい
- 金属を使わないので、金属アレルギーの心配がない
- 金属が溶け出して、歯ぐきが黒ずむことがない
- 保険が使えるので、セラミックより費用を抑えられる


注意したいところ
- 金属より割れたり欠けたりしやすい
- ある程度の厚みが必要なため、歯を少し多めに削ることがある
- 歯にくっつける力が弱く、外れることがある
- 時間がたつと、すり減ったり色が変わったりしやすい
- 強い歯ぎしりや食いしばりがある方には、向かないことがある
前歯のCAD/CAM冠の見た目や条件は前歯のCAD/CAM冠で、保険外のセラミックとの違いはセラミックの選び方でご紹介しています。
酒井歯科医院は、2013年からセレックで取り組んできました
当院では、国の動きより前の2013年(平成25年)に、CAD/CAMシステム「セレック(CEREC)」を導入しました。今は、お口の中を読み取るスキャナーと、被せ物を削り出すミリングマシンを院内に置き、保険のCAD/CAM冠もすべて院内で設計・削り出しをしています。


セレックを導入した理由は、「金属が高いから」ではありません。見た目が自然で、金属アレルギーの心配がなく、患者さんのからだにやさしい治療を、できるだけ多くの方に届けたいと考えたからです。

当院のセレックによる治療は、審美歯科のページでもご紹介しています。
いちばん大切なのは「削らずに済む」こと
銀歯の値段やCAD/CAM冠の良し悪しも大切な情報ですが、もっと大切なことがあります。それは、そもそも歯を削らなくて済む状態を保つことです。削らずに済めば、被せ物の材料に悩む必要もありません。
当院が予防に力を入れているのは、そのためです。予防歯科では、歯科衛生士による定期的なクリーニングや、むし歯・歯周病のリスクのチェック、フロスや歯間ブラシの使い方のアドバイスなどを行っています。
よくあるご質問|銀歯とCAD/CAM冠
Q1. 保険の銀歯は、なくなるのですか?
なくなりません。金銀パラジウム合金の銀歯も、チタン冠も、今も保険で作ることができます。ただ、国は金属に頼らない治療を進めていて、2026年6月の改定では、奥歯にも保険の白い被せ物(CAD/CAM冠)を使いやすくなりました。白い歯か金属か、歯の状態やご希望に合わせて選べます。
Q2. 銀歯が高くなったのは、なぜですか?
銀歯の材料の金銀パラジウム合金(金パラ)に含まれる、パラジウムや金などの値段が大きく上がったためです。保険で決められた材料の値段(告示価格)も、それに合わせて引き上げられてきたため、窓口でお支払いいただく金額も上がっています。
Q3. 窓口負担が上がったのは、歯科医院がもうかっているからですか?
いいえ。保険診療の値段は、すべて国が決めています。窓口負担が上がったのは、材料の値上がり分が保険の値段に上乗せされたためで、歯科医院の利益が増えたわけではありません。むしろ、実際に材料を仕入れる値段が保険の値段を上回り、作るほど歯科医院の持ち出しになる「逆ザヤ」が続いています。
Q4. 奥歯にも、保険で白い被せ物を入れられますか?
はい。2026年6月の改定で、奥歯(大臼歯)にCAD/CAM冠を使うときの、かみ合わせの条件がなくなりました。前歯から奥歯まで、ほとんどの歯で保険の白い被せ物を選べます。ただし、歯の状態やかみ合わせによっては、金属のほうが向いている場合もあります。
Q5. CAD/CAM冠に、デメリットはありますか?
あります。金属より割れたり欠けたりしやすく、ある程度の厚みが必要なため、歯を少し多めに削ることがあります。また、外れることもあり、強い歯ぎしりや食いしばりがある方には向かないこともあります。良い点と注意点をご説明したうえで、一緒に選んでいきます。
酒井歯科医院では、むし歯や歯周病の治療だけでなく、再発を防ぐ予防歯科に力を入れています。被せ物の材料のことで迷ったときは、お気軽にご相談ください。保険の治療費の目安は治療費のご案内で、当院の診療内容は診療案内でご覧いただけます。
参考・出典
- 全国保険医団体連合会「厚労大臣『金パラ価格は適切に改定されている』と認識」(2026年1月20日/金パラの告示価格と市場価格)
全国保険医団体連合会
執筆・監修歯科医
できるだけ“削らない”
“金属に頼らない”歯科医療を
理事長・院長
酒井直樹
SAKAI NAOKI
経歴
- 1980年 福島県立磐城高等学校卒業
- 1988年 東北大学歯学部卒業
- 1993年 酒井歯科医院開院
- 2020年 医療法人SDC設立 理事長就任
所属学会・勉強会
- 日本臨床歯科CADCAM学会
- 日本顎咬合学会
- 日本口育協会
- 日本歯科医師会
- 日本歯周内科学研究会
- ドライマウス研究会







