お子さまの歯と全身の健康を守るための『小児予防矯正』
私も3人の子の親ではありますが、健全なる発育を願わない親はいらっしゃいませんでしょう。 それなのに思いがけずに歯並びが悪くなってしまう口腔機能発達不全症というトラブルが歯科界では大きく注目されるようになりました。
歯科医師は、お子さんの健全なる発育を考えて必死になって警鐘を鳴らしはしますが、目に見えてるのに想像もしないようなことなのでなかなか理解されないのが現実であります。(泣)
一般的には歯並びは『悪くなったら治すもの』のように思われてきました。かつてはワイヤー矯正が、現在では症例にも因りますがマウスピース矯正(インビザライン)を用いたりしながら改善を図るもののように思われて来ましたが、それよりも前段階(5歳~12歳の乳歯・永久歯混合歯列期)にアクションを起こし、プレオルソ等の口腔内装置を用いてお口ポカンの口呼吸であったり本来のポジションとは異なる低位の舌位置等の不良習癖の改善を図ることが求められるようになりました。
同時に、装置に頼らずに本来の呼吸・舌運動・飲み込み・顔の筋肉を改めて見つめ直し、本来の動きに補正を図るアクティビティーと呼ばれる訓練が注目されるようになって参りました。
5歳未満のお子さんに対しても、より良き生活習慣獲得で歯並び予防が出来るように情報提供して参ります。 このページでは、それらの基本機能が歯並び不正に繋がる因果関係を考えて参りましょう。
小児予防矯正についてのご説明
大まかに言えば乳歯しか無い乳歯列期と乳歯・永久歯が混在する混合歯列期では考え方が若干異なります。更に細かく御理解いただくためには年齢によって分けた下記からお進み下さい。
歯並びが悪くなる原因
お口の悪いクセによって歯並びは悪くなると言われます。遺伝的な側面も全否定はしませんが、多くの場合には下記の様な理由が歯並び悪化を助長すると言われています。
現代のお子さんの約6割以上がこのような症状のどれかに該当すると言われています。
- 口呼吸
- 舌の位置が正しい位置にない
- 飲み込みに異常がある
- お口周りの筋肉に力が入り過ぎている、または力がない
- 舌のクセがある
- 食べ物をきちんと噛み切る事ができない
お口の悪いクセについて
お口に悪いクセがあるか見極めるポイントとして、下記の様な点が挙げられます。心当たりはお有りになりませんでしょうか?
- お口がポカンと空いている
- 食事中クチャクチャ音がする
- 笑ったとき歯茎が見えやすかったりする
- 睡眠中いびきをかく
- 飲み込む時にお口に力が入っている
- 唇の周囲にシワが入っている
- 上唇が富士山型になっている
お口に悪いクセがつく理由
日々のナニ気ない生活習慣によって、悪循環となりお口に悪いクセがつきます。
お口の悪いクセによる悪影響
口呼吸(舌の位置にも繋がります)
- 口内が乾燥するので口臭が生まれる
- 風邪などの原因菌を直接吸い込むため免疫力が低下する
- 集中力や運動する際の持久力が低下する
- お顔立ちに悪影響がある(顎の発達・骨の発達)
※顔の骨は6歳までに8割形成されるため、それまでに治す必要がある - 姿勢が猫背になる
舌の位置・クセ
- 舌が正しい位置(スポット)にないと上顎を支えることができず、顎が下方に成長して歯ぐきが露出するガミースマイルや出っ歯になる
- 全体的に下がり気味のお顔立ちになる
- 滑舌が悪くなる
- 舌に力がないため、咽頭に舌が落ちていびきを引き起こす
飲み込みと咀嚼の問題
- お口周りの筋肉を使って飲み込むため、歯が圧迫され歯並びが悪くなる
- 唇の形が崩れる・頬がこけたようになる
- 咀嚼できないため消化不良になる&唾液が分泌されない
- 口呼吸も影響して唾液が出にくくなっているため、むし歯・口臭などが発生する
お口周りの筋肉の未発達
- 唇の形も悪くなるだけでなく、顔全体が下がったように成長してしまう
- 口呼吸のきっかけとなる
- 顎が正しく成長しない
- 目の下にクマができたり、白目が見えやすい目の形になる
お口の悪いクセを治す意味
備えあれば憂い無しの言葉の通りです。大きく分けて3つの意味があります。
➊ -1 歯並びが悪くならない
お口の悪いクセを治すことで、「歯並びが悪くなるのを予防」することができます。きれいな歯並びでの成長発育となります。
➊ ー2 美しい歯並びになる
お口の悪いクセを治すことで、歯並びがまた悪くなる「後戻りのないお口」になり、矯正治療の効果が出ます。
考えてみれば、根本的な原因解決がなされない限り、同様の傾向が生じるのも無理はありませんね。
我々歯科医療従事者は、矯正をなさったことがある方は犬歯(糸切り歯)の後ろの歯を2本、または4本抜いてることが多いのですぐに解りますが、原因がそのままだったんでしょう、長じて歯並びが再度不正になってしまってる方によく遭遇致します。
➋ 身体の正しい成長を促す
例えば、口呼吸を改善することで、免疫力の向上・成長ホルモンの促進・集中力の持続・睡眠の質の改善といった効果が得られ、お子さまの健やかな成長を促進できます。
➌ 美しいお顔立ちに育つ
鼻呼吸の人と口呼吸の人の顔立ちの違いは下記の様だと言われております。
一時期もてはやされた『うつ伏せ寝』、最近は乳幼児突然死症候群の問題から乳幼児をうつぶせにして眠らせる事は良くないと言われて注意喚起がされていますが、頭の恰好が良くなる(後頭部をいわゆる絶壁頭にしない)というので『赤ちゃんをうつ伏せに寝せる』ことが流行ってしまった時期が有りました。
歯科の観点から申しますと、うつ伏せ寝は呼吸確保の為に必ず首を左右どちらかにひねって頬部を押し当てますから、頭部の重みが顎に掛かり続ける事になってしまって顎の変形や歯並びの不正に繋がってしまう由々しき問題となってしまうのです。(泣)
乳幼児の骨はまだ柔らかく、下顎の骨は容易に変形し、顎の関節も左右差が出ることになり宜しくないのです。顎の変形は顔の変形に繋がってしまいます。
歯が乗っかる受け皿でもある顎が不正となれば歯並びにも大きく影響を及ぼしてしまいます。 お顔付きがほっそりしてたり、曲がったように見える方は成長期に曲がるような外力(頭部の重み)が加わったことが多いといわれます。
ひとたび傾くとその傾向は顕著になり、顔の変形は徐々に酷くなるようです。頬杖さえも歯並びには悪影響を及ぼすと申します。無理な力はNGかと思われます。
お口の悪いクセを治すには?
当院が推奨している「小児予防矯正」を行うことで治すことが可能です。アクティビティと呼ばれる『呼吸・舌・飲み込み・口腔周囲の筋肉の訓練』等をすることで叶えられますので、どしどし情報提供して参ります。
小児予防矯正の全体像 ➊
お口の癖を治して(Ⅰ期治療)、その後に歯並びを治す(Ⅱ期治療)のが予防矯正です。
小児予防矯正の全体像 ➋
予防矯正はお子さんがまだ幼い「今」だからこそ行える治療です。中学生になってからでは・・・遅いのです。
予防矯正を行った未来
予防矯正を行うことで大きく次のような3つの効果が得られます。
当院ではスタッフが中心となって親御さんと一緒にお子さんをサポートして参ります。
朝日サリーさんに健康情報掲載
お世話になっている長間折り込み紙の『朝日サリー』さん。その『健康MEMO』って医療情報欄に縁あって小児予防矯正に関わる健康情報をご掲載いただきました。文面は下記の通りです。
『未来の歯並びを予防する』
歯科界では3年前に口腔機能発達不全症という病名が新設され、現代の乳幼児に口呼吸、飲み込みが上手くできない、舌が正しく使えない等の 歯列不正の根本原因であるお口の悪い癖と言われる症状が増えて来ていると警鐘が鳴らされ続けております。
朝日サリー『健康MEMO』(2021年10月)
お子さんは、ロウソクが吹き消せなかったり、飲み込み方が変だったり、常にお口がポカンと開いていたりされていませんか?
❶ 小児予防矯正とは?
「お口の悪い癖」を改善して正しい成長をサポートする矯正治療になります。筋機能訓練(お口のトレーニング)とマウスピース型の装置等を用いて顎の成長発育を促し、より良き歯並びを目指しましょう 。
かつては大きな永久歯の萌出に備えて乳歯列はすきっ歯が当たり前でした。最近では口腔機能が未発達故に乳歯の段階で歯同士が密着状態の幼児が多数。お子さんはいかがでしょうか?
❷ 機能不全と不正な歯並び
むし歯や歯周病予防だけでなく口腔周囲の諸機能を発達させて歯並びをも予防する考え方が歯科界のトレンドです。5~9歳の骨の柔らかい時期に歯の受け皿となる顎を 成長させ将来的に永久歯が余裕を持って配列出来るようなスペースを確保し、不正咬合を未然に防ぎましょう。
10歳頃以降には顎の骨の成長期は過ぎてしまいますので、幼小児期に筋機能訓練や装置で顎の拡大を促したり鼻呼吸への改善を促す予防法が注目を浴びています。
❸ 生活習慣から変えてみる
お口の悪い癖改善には舌や口腔周囲筋の発達が欠かせません。食事の際によく噛むように飲み物を排除し、前歯でかぶりつく食材を心掛けてみて下さい。遺伝的要素も否定は出来ないのですが、お子さんの食べ方・飲み込み方に不安をお感じの方はより良き未来の咬合と全身の健康のためにお近くの歯医者さんに御相談下さい。
執筆・監修歯科医
医療法人SDC 酒井歯科医院
院長 酒井直樹
1980年 福島県立磐城高等学校卒業
1988年 東北大学歯学部卒業
1993年 酒井歯科医院開院
2020年 医療法人SDC 設立