TREATMENT
当院の歯周病治療
歯をなくす原因は色々ありますが、トップを占めているのが歯周病です。40歳以降になるとお口の中の環境が変わり、急激に歯周病リスクが高まって45~50代の88%が歯周病に感染しているといわれています。
(歯科疾患実態調査より/厚生労働省)
歯周病は、歯石に細菌が付着して起きる病気です。歯周病治療は原因菌の温床となる汚れを徹底的に除去することが大事です。完治が難しい病気ですが、きちんと治療をすれば少なくとも進行を食い止めることはできます。その後のメインテナンスを怠ると再発の恐れがありますのでセルフコントロール(自己管理)がとても大切です。
口腔清掃指導(TBI)
患者さん御自身が日々行うセルフケアは、歯周病の予後を決定する大切なプロセスなのは間違いありません。考えてみたら御本人にその気が無いのに我々だけが頑張ってどうなるモノでもありません。(泣)
思うようにブラッシング出来ずに不潔な状態が続いてしまえば、プラークは歯の周辺に残り歯周病再発を免れるのは難しくもなりましょう。逆にセルフ・ケアがしっかりなされると歯肉の状況も劇的に改善するのも間違いはありません。その為に『こんな風にブラッシングすると良いみたいですよ』であり『こんな補助清掃用具があるんですよ』といった患者さん毎のポイント伝授を最初にさせていただきます。
最初に正しいとされるブラッシングの方法や歯間ブラシ・デンタルフロスなどの使用方法を歯科衛生士さんからお伝え致します。
電動歯ブラシを御使用の方はその旨仰っていただければそれに応じたお話を致します。
当院では入社後に歯科衛生士・歯科助手を問わず全員に院長が電動歯ブラシをプレゼントして実際に使っておりますので、経験談としての指導が可能であります。また、各種の疾患に対しての内服薬の副作用で唾液が出にくくなってる方もいらっしゃいます。そういった方には洗口液(マウス・ウォッシュ)の併用などもオススメしています。御相談下さい。
スケーリング
スケーリングは、歯周病の原因になる歯石や細菌の温床であるプラークを徹底的に取り除く治療です。歯科衛生士さんが手用スケーラーや超音波スケーラーと呼ばれる専用器具を使って歯ぐきから上に付着した歯垢や歯石を徹底的に除去します。
歯科衛生士
歯石は、歯に付着したプラークが除去されないまま数日間その場に堆積することで、唾液の成分によってプラークが石灰化したモノです。それ自体に強い病原性があるワケではないのですが、表面が粗い故に新たなプラークが付着しやすく炎症の原因となり得るので除去する事が求められます。
スケーリングは歯周病治療の基本になる治療で、汚れとともに原因菌を除去することで歯ぐきが引き締まり歯周病の進行を食い止めることができます。軽度の歯周病であれば数回のスケーリングで根治でき、歯周病の再発予防につながります。
仮にブラッシングしただけでも出血してしまうような歯ぐきの炎症度合いが重症化した歯周病の患者さんであっても、このスケーリングは一回で全部を除去する事はありません。上下顎で2~3回に分けて行います。これは、どうしても出血を余儀なくさせてしまうことで口腔内の歯周病菌が血液中に取り込まれ菌血症を惹起することを防ぐためであります。
SRP
歯ぐきから下になる歯周ポケットの内部(歯の根面のセメント質)は、表に見えませんが歯周病が進行すると汚れが入り込んで根の回りにこびりつきます。SRPは、こういった部分の汚れや病的な表面を取り除いて歯周病菌をコントロールします。必要に応じて麻酔をかけて歯周ポケットの内部にスケーラー(専用器具)を入れて汚れをかきとります。これにレーザーを用いたりも致します。
スケーラーを用い根面をなめらかに整えることでプラークが再び付着しにくい状況に変化させます。同時に歯ぐきが引き締まったり歯肉と歯の根面が再度くっついてくれることで歯周ポケットが浅くなる効果を期待します。
こういったスケーリングやSRPを行った直後は一時的に知覚過敏症が起こりやすくなります。これは綺麗にする事で隠されていた根面が露出をする為と考えられます。悪いことでは無いのですが外部からの刺激はダイレクトに伝わってしまうようです。心配はありませんが、症状が余りに強い場合には知覚過敏治療薬を塗布して様子を見ることも致します。
歯の最表層にあるエナメル質は無感覚で削っても痛みは感じません。本来見えない根部分はエナメル質で覆わずに痛みを感じる敏感な象牙質で出来ていて、...
PMTC
PMTCとは、専門のトレーニングを受けた歯科衛生士が、歯垢・歯石を上記の様に徹底的に除去した後に歯の表面に付着した微細な歯垢や沈着物を特殊な医療機器を使って完全に取り去り歯垢の再付着を防ぐためにクリーニングすることを指します。
同時に歯の質を強くするためにフッ素を塗布する行為をいいます。機械的に除去するということからPMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)と言います。日本語で表記すれば『機械的歯面清掃』とも言われるモノです。
PMTCは、むし歯・歯周病の予防管理を目的として北欧でシステム化され,現在多くの国で行われています。
2022年秋からは、このPMTCを効率良く強力に施術する機器として『エアフロー』も導入し、『Guided Biofilm Therapy(GBT)』といった治療方針の下、歯科衛生士さん達に取り組んでもらってたり致します。
噛み合わせの調整や暫間固定
歯周病が進み歯ぐきが腫れたり、もしくはグラつくようになった場合、噛んだ際にその歯に負担が集中して痛みが伴うことがあります。その場合には噛み合わせの調整(咬合調整)をしたり、隣在歯と樹脂状のモノで固めて連結して固定させる暫間固定なることも致します。さらに歯ぎしりや食いしばり、歯をカチカチさせるようなブラキシズムの癖があると歯周病が悪化しやすいので、睡眠時にマウスピース(ナイトガード)を装着してもらって歯や顎関節への負担を軽減させる治療を併用することもあります。
歯ぎしりは、日中には出せないような凄まじい力なんだそうです。無意識に3~4倍の強大な力が歯に加われば良質な睡眠の妨げになるだけでなく詰め物が...
昨今の歯科界では噛みしめ(歯列接触癖)というのが悩ましい問題点になっています。日中何かに集中したり、緊張した状況下で無意識に上下の歯をわずか...
メインテナンス(歯周病安定期治療)
これらブラッシング指導からスタートする歯周基本治療が終了したら再度、歯周ポケットの深さをチェックする歯周組織検査を行います。御本人の努力と歯科衛生士さんお手によりプラークや歯石が綺麗に除去されると歯周ポケットは浅くなり、炎症も治まることで歯肉からの出血もグンと減るはずで数ヶ月の後には出血しなくなります。歯周病治療はひとまず終了となり、その後には定期的なメインテナンス期間に入ります。軽度の歯周病の場合には、それ以上の歯周外科治療をしなくてもこうした処置でよくなることがほとんどです。
当院はかかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所の認定を受けておりますので、重症化してる方の場合(ポケットが4㎜以上の方)には毎月のメインテナンス( 歯周病安定期治療:SPT )も可能です。歯周ポケットが3㎜以下の方であっても歯周病重症化予防と言って保険でも3ヶ月に一度のメインテナンスは可能となります。
酒井歯科医院
ただ一方では、これらの歯周基本治療をしてもポケットが改善せずに炎症が治まらない場合には、再度、スケーリングやSRPを繰り返したり下記の歯周外科治療へ移行したりします。
歯周外科
歯周病が悪化してスケーリングやSRPで症状が改善しない場合は、歯周外科で外科的な処置を行います。フラップ手術やリグロスやエムドゲインと言った薬剤を用いる再生療法など複数の治療法があり症状に応じて選択します。
なお、スケーリングやブラッシングを徹底していれば、歯周外科に至るケースはほとんどありません。残念ながらすべての症状に対応可能なわけではなく症例は相当に限られる(一部分の水平的骨吸収に限る)ことをご理解願います。
酒井歯科医院
このリグロスは、成長因子の作用により歯周病で破壊された歯周組織の周囲にある細胞を増やし、さらに血管を作って細胞に栄養を送り込みます。これらの作用により歯槽骨などの歯周組織が再生されると言われています。
歯周内科
前述しましたように歯周病の原因は歯周病菌と呼ばれるモノの細菌感染です。我々も良く経験するのですが、口腔内がブラッシングで整えられていてピカピカにもかかわらず歯周病が進行なさってる方もいらっしゃれば、反対に随分とプラークだらけなのに歯周病的問題(骨の消失等)が起こってない方が現にいらっしゃるのです。
そこで考案されたのが『歯周内科学』という考え方でありました。これは細菌(真菌を含む)に対して抗菌剤の内科的服用で対応しようという考え方であります。その歯周内科的対応は現状では保険適用にはなりませんので下記の歯周内科専用ページにまとめてあります。御興味ある方は御覧になってみて下さい。
歯周内科治療の特徴 歯周内科治療の流れ 歯周内科治療の種類と料金歯周病を短期間で改善痛みの少ない歯周内科治療一般的...
お口の中の歯周病菌の様子を位相差顕微鏡(いそうさけんびきょう)で覗いてみますと、こんな感じなんです。これを如何に除菌し、その除菌状態を再感染せずに維持出来るかが歯周病進行の鍵を握ろうかと思います。スタッフに御声掛けいただければプラークを採取して今現在の歯周病菌の多い少ないを御確認もいただけます。
コラムにも『歯周内科治療のオススメ』としてまとめてみました。位相差顕微鏡像を御確認いただけます。また、歯周内科的な考え方は朝日サリーさんの『健康MEMO』なるコラムでも取り上げてみました。合わせて御覧下さい。