ORAL CANCER

口腔癌への理解

数年前に芸能人の方の舌癌が話題になりましたが、口腔癌ってやつをご存知でしたでしょうか? 舌や頬の粘膜など主に口の中にできる癌のことです。日本では残念ながら毎年約8,000人が口腔癌(咽頭含む)で亡くなられています。

STEADILY INCREASING

増加の一途を辿る口腔癌

当院では口腔がん検診を始めました。私自身は口腔外科出身ではありませんので明確に見極めるスキルを有しておりませんが、懇意にしている歯科大学の口腔外科教授に口腔内写真撮影画像を送ることで鑑別判断を下していただけるシステムを構築しております。

口腔癌の死亡者数の推移

舌にできる舌癌、歯ぐきにできる歯肉癌、頬の内側にできる頬粘膜癌などがあります。言うなれば歯以外歯ぐき口腔底頬粘膜口蓋顎骨口唇などどこにでも発生する可能性を秘めてるという厄介さがあります。喫煙や尖った歯などの刺激により発症すると言われることもあります。
実は、初期の口腔がんは痛みや出血がなく、口内炎や歯周病と勘違いして放置してしまうケースが少なくありません。2019年冬に報道された芸能人・堀ちえみさんの「舌癌公表」に関しても、進行させてしまった原因は「口内炎との見誤り」でした。実は舌癌は口腔癌の約6割を占めます。その口腔癌もむし歯と同じ・・・いや、当然それ以上に早期発見・早期治療が大切です。

WHAT IS ORAL CANCER?

口腔癌とは?

口腔癌とは口腔領域内にできる癌のことで、できる部位により舌癌・歯肉癌・口底癌・頬粘膜癌などと呼ばれます。
他の癌と同様、原因は飲酒喫煙などの生活習慣、大きな鋭縁を伴うむし歯の放置による口腔粘膜への持続的な刺激、口の不衛生などが原因です。
日本の口腔癌の死亡率は、なんと46.1%にもなり、これは、胃がんや乳がんを大きく上回っていて、日本は先進国の中でも口腔癌による死亡者数が年々増加しているのです。

口腔癌の原因

口腔癌の原因

上記のイラストのように、良くないとされる生活習慣(たばこ・過度な飲酒)であったり、口腔内環境の悪さ(歯並びの悪さ・合わない入れ歯・欠けたままの歯等)から来る慢性的な傷や刺激が原因と言われています。

悪化してしまう理由

その原因は、残念ながら認知度の低さにあります。口腔癌は癌全体の数%であるため、日本では癌検診をやっていても口腔癌まで確認することは少ないのです。また初期の症状は・・・

  • ただの口内炎だと思っていた
  • 痛みがないので放っておいた
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院長

上記の理由から発見が遅れ手遅れになるケースが非常に多くなっています。考えてみますと単なる口内炎でしたら2週間もすれば自然に治癒します。2週間以上経っても口内炎が治らない場合は速やかに歯科の受診をお勧め致します。口腔癌の種類と症状も御確認下さい。

FEATURE

口腔癌の特徴

口腔癌はなかなか発見に至れない事が多いように感じます。仮に異常を感じても、口内炎や歯周病と間違ってしまい放置されることも多いです。
万が一触ってみて明らかに硬いしこり(硬結)が感じられた場合は癌の可能性を否定できませんので、歯科医院や口腔外科を受診なさるのがベストです。

  • 舌や歯ぐきが長期にわたり赤や白に変色する(白板症or紅板症
  • 硬い「しこり」を触知する
  • ただれた潰瘍がなかなか消えない
  • 口腔内の特定箇所がひりひりする
  • 頸部のリンパ節が腫れている気がする

TYPES & SYMPTOMS

口腔癌の種類と症状

下記に、各口腔癌の一般的症状を列記してみます。

口腔内の各部の名称

舌癌

初期症状は、舌の表面側縁部に小さなしこりができるだけで表面はほとんど変化が見られません。場合によって、表面下はしこりが一切できず粘膜の表面だけ白くなるケースがあります。痛みだけのケース、粘膜表面が赤くなることも否定できません。

歯肉癌

初期症状は、歯肉が腫れて易出血性を呈する事があります。出血しやすかったり、場合によっては潰瘍ができる場合もあるようです。しっかりブラッシングできているのに歯がグラつくこともあります。

口腔底癌

初期症状は、舌下の粘膜表面が部分的に赤くなったり白くなったりします。進行すると隆起やしこり、もしくは潰瘍が生じます。

頬粘膜癌

初期症状は、他の口腔癌と同様に粘膜表面が白くなったり赤くなったりします。進行するにつれ粘膜の隆起やしこり・潰瘍が生じます。口が開きにくくなるケースもあるようです。

口唇癌

初期症状は、唇にしこりが生じ潰瘍ができる可能性が高まります。

上顎洞癌

上顎洞と呼ばれるのは耳鼻科領域でいうところの副鼻腔のことです。この癌の初期症状は、上顎の歯のつけ根の粘膜や頬が腫脹したり、長期に渡る鼻詰まりや鼻水・歯痛・頭痛・開口障害・眼球突出・複視(物が二重に見える)など多岐にわたります。

TYPES & SYMPTOMS

各癌のセルフチェック

是非、セルフチェックをなさってみて下さい

  • なかなか治らない難治性の「腫れ」や「しこり」はありませんか?
  • 粘膜をセルフチェックした際に、やけに「赤く」なったり「白く」なったりしている部位はありませんか?
  • 2週間以上なかなか治らない口内炎はありませんか?
  • 長期にわたり、合わない入れ歯を無理して使っていませんでしたか?
  • 頸部のリンパ節に腫脹を意識している
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院長

食べ物が最近になって飲み込みにくくなった、または舌や頬の動きが悪く痺れや麻痺などの症状はありませんか? 
大事なのは早期発見に尽きます。口腔内は見えますのでご自身でも確認なさってください。

セルフチェックが可能な口腔内

BASIC FLOW

口腔癌検診の基本的な流れ

口腔癌検診は、患者さんのお口の中を隅々までチェックします。お口の中を全てチェックする事で患者さんが自覚できない病変を見つけられます。
また、口腔癌は発見が遅れることで患部を大幅に切除しなくてはならなくなり、発声や発音に障害が残る可能性が非常に高まります。

それでも早期発見・治療さえできれば切除範囲はごくわずかになる為、障害は残らないケースが多いようです。定期的に検査をし、口腔癌の早期発見と治療を実現しましょう。口腔癌は早期発見・治療ができれば命を落とすケースは少ないことを覚えておいていただきたいです。
ただし、対応が後手に回れば回るほど凄まじい審美トラブルが生じたり命を奪われる疾病である事をご理解いただければと思います。

1. 問診票への記入

受診同意書のご確認後に、詳細な問診票への記入(またはスタッフが伺います)をお願いしています。
家族歴や既往歴など、その方が口腔がんになる要素がどれくらいあるのか判断するために、生活習慣等についてご記入いただきます。個人情報は如何なるケースでもしっかり守りますのでご安心ください。

問診

2. 視診・触診・写真撮影

一般の歯科医にとって、口腔癌は「視診」で判断が付くものばかりではありません。明らかに粘膜の表層に口内炎様のトラブルや潰瘍があれば別ですが、ご本人が指さしてくださる部位に「触診」や「写真撮影」でも判別できず、何らの違和感を覚えないことも多々あります。(汗)
その場合は、基幹病院で下記の病理組織検査をお願いする事もあります。その点をご理解願います。

☑ 細胞診

癌が疑われる部位の表面組織を綿棒でこすり取り、顕微鏡で癌細胞であるかを調べ、癌細胞の種類・悪性度の判定を行います。

☑ 組織診(生検)

より診断を確実にするために、部分麻酔下で異常が見られる部位を小さく切り取り病理検査(生検)をします。

3. インターネットを用いてデータ送信

異常を発見した場合、歯科大学の口腔外科教室教授に、インターネットを介して即座に撮影した写真を送信し診断のサポートを依頼します。

4. 返信に基づく結果のお知らせ

結果を元に口腔内の現状に関しお知らせいたします。電話でも構いませんし、報告書を患者さんと医院を繋ぐ「メディカルボックス」に入れておくことも可能です。私や口腔外科専門医から指摘があった場合は速やかに口腔外科の受診をお勧めすることになります。
このメディカルボックスは、従来の我々からの「一方通行の情報発信」から、「双方向のやり取り」へ進化した画期的なシステムです。当院はこういったデジタルツールをフル活用しています。

EARLY DETECTION

口腔癌早期発見の為に

私が所属する日本歯科医師会で非常にわかりやすい動画(日歯8020TV)を紹介しています。ご覧になってみてください。

LET’S CHECK

口腔内に異常はありませんか?

口腔癌は、文字通り口腔内にできる癌のことです。他の癌との最大の違いは、視認可能、すなわち自分の目で確かめられる点です。
ケースによりますが、極めて早い段階で発見できる可能性があるという事になります。まずはご自身の目で、定期的にお口の隅々をチェックなさってみてはいかがでしょうか?
国内の口腔癌発症者の全癌に占める割合は1~5%と言われています。発症部位は舌が約半数を占め、歯肉・頬部・口腔底部と続きます。舌癌は、ほとんどが側縁部の下側辺りに発症します。60代以上の方が多いですが、10~20代でも発症例があるようです。実際に私が臨床で遭遇した方は40代の方もいらっしゃいました。

最大の原因は喫煙だそうです。1日5~10本以上を30年以上吸った方は、リスクが非喫煙者の4倍以上といわれます。加えて飲酒進行した歯周病も更にリスクを高めるようです。むし歯で歯が欠けたまま鋭縁が生じたり、歯並びの不正で歯列から舌側に飛び出している歯などもマイナス要素です。歯周病悪化で歯を喪失し入れ歯を装着…それが合わず舌や歯肉がこすれて炎症を起こしたところにも発生しやすいと言われています。

口腔癌の最大の原因は喫煙
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院長

ご自身で口腔内チェックを行った時に下記リストの症状や状態が1つでもあれば、是非ともかかりつけの歯科医に相談なさってみてください。

  • 頬粘膜に赤や白に変色しているところがある
  • なかなか治らない口内炎がある
  • 口内炎が同じ場所に何度もできる
  • 腫れていたり、潰瘍やただれを起こしている
  • 硬いしこりのようなものがある
  • 詰め物や被せ物、むし歯がある箇所に傷や口内炎のようなものがある
  • 入れ歯のバネが当たって傷になっているところがある

LET’S CHECK

口腔癌の現状

口腔癌罹患者数は年々増加傾向にあります。
国立がん研究センターの最新情報によると、2018年の予測値は口腔・咽頭癌の罹患者数23,000人と公表されており、2008年の罹患者数(15,521人)と比較すると約7,500人増えています。

口腔外科⑥

日本での口腔がん患者の死亡率は「35.5%」

今後我々が迎える超高齢化社会。死亡者数も増加傾向を辿り、そうなると希少がんとは言っていられない時代が到来するかもしれません。

海外と日本の違い

アメリカの口腔がんの罹患率は48,330人(2016年)と日本の約2.2倍ですが、死亡率は9,570人で日本の半分近くであることがわかります。
イギリス・フランス・イタリアなどの先進国でも口腔並びに咽頭癌の死亡率も年々減少しています。
それに反して日本は罹患率・死亡率ともに増加傾向にあると言われておるのが実情です。諸外国では国全体が積極的に口腔がんの早期発見・早期治療に努めているからにほかなりませんでしょう。米国では、半年に一度の口腔がん検診が実質義務化されているそうです。
日本では口腔がんの認知度が低いことに加えて「歯科医院は虫歯や歯周病、入れ歯の治療で行くところ」という認識がまだまだ根強く残っているのが要因となりますでしょうか。

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院長

口腔がんは早期発見さえすれば必ずしも怖いものではありません。5年生存率は60~80%と言われてますし、早期発見・早期治療をすれば比較的に簡単な治療で治せて術後の後遺症もほとんど残らずに5年生存率が90%を上回ることも有り得ます。

執筆・監修歯科医

口腔がん