すでに番組としては終了した「タケシの本当は怖い家庭の医学」は、かなりインパクトのある番組でしたね。
インターネット時代のいいところは、こういうオモシロかった番組の過去の抄録が番組ホームページで見られることです。ちなみに同番組の場合は2004年4月13日放送が第一回のようで、なんと初回番組の内容が「本当は怖いむし歯~むし歯が引き起こす恐怖」で、「いびきが舌癌の最終警告」という衝撃の内容でした。
気の早い方は「いびきをかくと舌癌になるのか??」と思われるかもしれませんが、それは違います。どういうことかといいますと、同番組の説明によると「ガンで腫れあがった舌がのど元に垂れ下がったために、気道が狭くなり、いびきをかくようになったのだ」ということのようです。
ネットで裏を取って参りましょう
私自身はそれほどインターネットに精通してるわけではないのですが、詳しい方はいらっしゃるモノです。そういった方は即座にネットで検証して裏を取っていくようで、そのテクニックを教えていただいたので備忘録的に残しておきますね。
まずは、いつものようにGoogle検索をを駆使して「ウラ」を取っていくんだそうです。
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』で「舌癌」を調べ、そのページ内で「いびき」というキーワードがあるかどうか調べてみます。結果はゼロ。では今度は逆引きでやってみるんだとか・・・・。
ウィキペディアで「いびき」を検索して、ページ内検索で「舌癌」を調べましたが、こちらもゼロでした。
ただ、これだけで「舌癌といびきは無関係」とまでは言い切れないので、直接Googleで「いびき 舌癌」と検索してみます。結果は12,200件。ところが検索結果をよく見ると、案の定「タケシ・・・」、「本当は怖い」、「たけし・・・」などの番組内容に関連した書き込みが相当数ヒットしました。
そこで「除外検索」という方法で、「舌癌 いびき -たけし -タケシ -本当は怖い」と検索してみました。
結果は11,700件。上位表示からは「タケシ」関連のデータはなくなりましたが、これだけの数がヒットするということは・・・どうも関係はありそうな予感。ただ、知りたいのは「いびきをかくと舌癌になるか」あるいは「いびきは舌癌の前兆か」なのでもう少し調査。。
今度はGoogleで「いびき」と検索して、さらにacドメイン絞り込みを併用するようです。大学関係の情報だけを検索する高等テクニックですね。まず「いびき site:ac.jp」のヒット数は3,360件。検索結果の上位100件までの抄録部分だけをザッと見渡しても「舌癌」の記載はなし。逆引きで「舌癌 site:ac.jp」のヒット数は11,300件。上位100位以内の抄録部分に「いびき」の記載なし・・・。
大学関係の論文も詳しくチェック
「acドメイン絞り込み」で表示される検索結果は、大学関係の論文なども多数含まれているため、他の情報に比べて抄録がきちんと書いてある場合が多く、その中の上位100件に「いびき」や「舌癌」の記載がないということは、どうもあまり関係ないらしいですねと言いたいところですが・・・。
実は、この検索方法には致命的な欠点があったのです。では、その致命的な欠点とは?
無関係と早合点した人は要注意?
ネット検索で「いびきと舌癌」は無関係と早合点した人は要注意だそうです。
4~5年前ならいざしらず、さすがに最近ではYahooやGoogleの検索結果を鵜呑みにする人は減ったと思いますが、「acドメイン絞り込み検索」などのテクニックを駆使して辿り着いた検索結果ならば、ある程度信頼しても良さそうですよねぇ。
ところが、「大学関係の情報の上位100件までの抄録部分の記載を見る」という方法は、かなり信頼性のある方法ですが、実は落とし穴もあります。それは同義語検索の限界ということなんです。
ネット上に情報を発信する者の責任
この私が記載するお役立ち情報では、お口の健康情報を提供するとともに、こうやって閲覧下さる皆様が自分でネットを色々調べる方法についても解説しています。それは「情報開示 自己責任」という健康管理に関する基本的な考え方と、「私達の言うことを鵜呑みにしないで、いろいろ調べてね」というスタンスでもあります。
患者さんの中には「アンタは歯医者なんだから、治すのはそっちの責任だ、サッサとやれ」という姿勢の人が時々います。現に若かりし頃にはそう言われたこともありました。さすがに最近はこっちの年齢も高じて来たので無くなりましたが・・・・。
こちらは「病気になったのは貴方ですよ、私たちが病気にしたのではないですよ」と言いたいのですが、往々にしてそういう患者さんは聞く耳を持たない人ばかりですから厄介です。やはり健康管理は自己責任、医療は公的なもので限界もあることをご理解頂きたいと思っています。
ネットを制する者は・・・・?
少し話がそれましたが何が言いたいかというと、医療や健康管理にとってもっとも大事なのは情報であり、全ての患者さんが最新の情報を簡単にわかりやすく入手でき、その上で自己責任で病院を選び治療方法を選択できるというのが理想だと思っているので、いろいろな検索方法などもご紹介している次第です。
本論に戻りましょう。同義語検索というのは、「舌癌」とか「いびき」などの検索語そのものではなくその同義語に基づく結果も表示する機能で、Googleが2010年1月から正式に取り入れ始めました。もちろんGoogleでは、ずっと以前から関連キーワードや類義語なども考慮した検索結果を表示していましたが、公式な表明が行われたのは案外 最近のことなんですね。
Googleは同義語による検索結果に関する研究を十数年以上続けており、その精度は同義語を含む結果を持つ検索50件につき、不適切な結果はわずか1件だったということで、かなりの精度ではありますが、実は完全ではありません。
例えば、「舌癌」と「舌がん」では検索結果が834,000件と295,000件とかなり違ってきます。この両者を検索する人のニーズはほぼ同じわけですから、「同義語検索」を信頼しすぎるのは時期尚早と言えます。
舌癌とイビキの関連性は?
結論的に申しますと、「舌癌といびき」の関係ですが、「舌癌 site:ac.jp」の検索結果100件の抄録には「いびき」というキーワードは出てきませんが、「舌がん site:ac.jp」の検索結果は4件の抄録に「いびき」が含まれており、やはり「やや関係あり」ということがわかります。
取り敢えず・・・・以上であります。
執筆・監修歯科医
医療法人SDC 酒井歯科医院
院長 酒井直樹
1980年 福島県立磐城高等学校卒業
1988年 東北大学歯学部卒業
1993年 酒井歯科医院開院
2020年 医療法人SDC 設立