歯周病は、歯と歯ぐきの間に溜まった細菌の塊により炎症が起こる病気です。症状の進行によって歯肉炎歯周炎に分けられます。歯周病治療は正しい歯磨きと細菌の塊や歯石を取り除くことが基本です。

ただし、歯肉炎レベルなら基本治療で大抵回復しますが、歯周炎となり歯と歯ぐきの間に4ミリを超える溝(歯周ポケット)ができると専門的な治療が必要とされます。
歯肉の奥に隠れている細菌の塊や歯石などを局所麻酔をしてかき出したり、細菌を死滅させる抗生剤を歯周ポケットに注入したりするのです。

歯周病を放置すれば歯周組織が徐々に失われ歯が抜けてしまいますので、5ミリほどの深い歯周ポケットになった場合には歯周外科手術等を要することになります。
その外科手術とは歯肉を切開し感染した歯の表面をきれいにする方法の事ですが、通常の外科手術だけでは失った歯槽骨などの歯周組織は回復しにくいので、手術後の歯周組織の再生を促す方法としてGTR法なる歯周外科手術が推奨されるようになりました。

この方法はスウェーデンで開発され、80年代に臨床応用が始まったとされます。
日本でも90年代はじめに普及しはじめました。「歯周組織」を生み出す幹細胞が成人でも歯根膜に眠っていることが分かってきましたので、その細胞の力を高めることで歯を支える骨や歯ぐきを再生させるのです。
実際には、手術をする事で傷んだ組織を取り除く事になるのですが、その代償として当然の様にその部に空洞が出来てしまいます。そのままだと人間の組織治癒力は旺盛ですからその隙間を埋めようとして歯ぐき表面の柔らかい歯肉が入り込んでしまって歯槽骨等の再生を邪魔しちゃうので、せっかく手術までして綺麗にしたその部位に余計な歯肉が入り込まないようにする為に合成繊維の特殊な膜で空洞を囲い、歯槽骨の再生を待ち構える方法を取ります。それがGTR法なるものであります。

しかしGTR法はすべての歯を救えるわけではありません。
歯を支える歯槽骨の破壊の形が水平に広がったり、その破壊程度が重度だったりすると、この手術方法はまず使えません。(泣)
残念ながら治療結果も歯槽骨の破壊の形などによって大きな差が出ます。術後は歯周組織の再生に数か月から1年程度もかかるため、定期検査を欠かすことはその後も出来ない事になります。
何より肝心なのは術後の完全治癒後にも『正しい歯磨き』をして細菌の塊や歯石を再び付着させないことがとても大切と言えるでしょう。同様の治療としては、歯周組織の再生を促すたんぱく質を塗るバイオ・リジェネレーション法なども先進医療に認められています。

歯磨きで取りきれない歯周ポケットの歯石の除去などの為に、3~4ヶ月に1回は定期検診に歯科医院へ行きましょう。
毎日の基本は、食後3回、最低3分の歯磨き。毎日寝る前は細かくブラシを動かしながら歯と歯ぐきの間、歯と歯の間に毛先を軽く当てて1本ずつ溜まっているものを取り除くことを心掛けたいモノです。食後の正しい歯磨きにはどんな最先端の治療も敵わないと言っても過言ではないと思われます。

執筆・監修歯科医

医療法人SDC 酒井歯科医院の院長 酒井直樹

医療法人SDC 酒井歯科医院
  院長 酒井直樹

1980年 福島県立磐城高等学校卒業
1988年 東北大学歯学部卒業
1993年 酒井歯科医院開院
2020年 医療法人SDC 設立