マウスピース矯正
SCAN THE IMPLANT
インプラントもスキャンする時代
時代は目まぐるしく変わりますが、歯科医療技術もまさに日進月歩状態です。インプラントという言葉は多くの皆さんが耳にした事があると思いますが、これは人工歯根の名の通り顎の骨の内部にチタン製のインプラントを埋入することから始まります。従来は、ゴム状の物で型取りをして模型を作製し、技工士さんがセラミック製の白い歯(上部冠)を作っていたのですが、最近はセレックの助けを借りれば型取りはスキャナーカメラ、その後の上部構造(被せ物)製作全てをコンピューターで管理できるようになりました。
ERA of MACHINE CUTTING
カメラで撮影
マシンで削り出す時代
天然の歯に被せ物を作る際にもモチロン セレックは大活躍しますが、ありがたいことにこういったデジタル機器の進歩は止まることを知らぬようにどんどん進化しています。
2018年から当院で導入した「アトランティス・アバットメント」方式は、簡略化するとこの動画のようになります。モチロン、実際はこんなに簡単ではないのですが、苦しい型取りをせずに精度の高いインプラントの上部構造を作るのが驚くほど容易になりました。詳細は順を追って下記の通りです。
1. 型取り
埋め込んであるインプラントに、専用の特殊形状パーツを固定し通常通りにセレックで撮影開始。開口状態は維持していただきますが、グニュッとしたゴム状の物ではなくカメラ撮影だけなので苦しくありません。撮影終了後にインターネットを通じてデータを送信。
2. ネット経由でオーダーし返信データで確認
技工士さんの手元に瞬時に届いたデータを元に、バーチャルなデザイン用ソフトウェアを用いた歯科技工士さんがパソコン上で精度高く正確にデザイン。
より自然で審美的な仕上がりと、最適化された機能を得るために、最終歯牙形態予測を元にデザインされ、「こんなふうで如何ですか?」とデータ確認を私に求めてくださいます。
3. 素材のチョイス・決定
前歯には前歯の、奥歯には奥歯の理想的な素材があります。強度・審美性に配慮しつつチタン・ゴールド・ジルコニアから土台となる部分を選定します。歯科医サイドがOKを出した時点でインプラント上部構造(被せ物)の土台のような物(アバットメント)が製作開始されます。
4. 土台が送られてくる前に作製可能
当初は俄に信じ難かったのですが、データが確定した時点で当院のセレック・マシンにもデータが転送されミリングと呼ばれる削り出し工程開始。この時点ではまだ実際の土台が届いていないにも関わらず最終修復物(被せ物)が出来上がっているという驚くべき状況が生じます。
同業者にこれを話しても、相当デジタルデンティストリー(デジタル歯科)に精通していないと理解されないと思うほどに今のシステムは画期的なのです。
5. 見える部分はセラミック冠で
見える部分となる最終的な被せ物は、自院でセレックを用いセラミック素材で既にデータを元に作製済み。適合良好を確認したら患者さんの次回来院時に装着するのみです。
しかも型取りの誤差、石膏模型の誤差、技工士さんのテクニック誤差が一切ないため、かつてない程の精度を保ったまま完成です。「実に良い時代になった」と嬉しくなる程です。
ERA of MACHINE CUTTING
上部構造作製に必要
なのは撮影だけ
実際の手順はこのYouTubeの動画のようになります。当院はスタッフがこの撮影をしてくれますが、インプラントの型取り時に従来のような「型取りした材料が固まるまで数分間じっとしていてください」ということがなくなりました。
セレックの口腔内撮影用カメラで動画のような連続写真撮影。それだけで次回は前述通りに精度が格段に高い被せ物が出来上がってくる実に良い時代になりました。
実際は全部の症例に使える訳ではないですが、連続3本程までなら問題ないようです。
JSCAD
日本臨床歯科
CADCAM学会
縁あって、私が大好きなこの分野で学会発表の機会をいただきました。進化著しいこの分野は積極的に取り入れていかないとどんどん遅れを取り、それこそ浦島太郎になってしまいます。いわき市や福島県のレベルと異なり、全国から『CAD/CAM機器大好き!』の連中が集う全国規模の学会はそこそこのPCヘビーユーザーである私でもたじろぐほどのハイレベルでありました。(汗)
ただし、大いなる学びを得るのも紛れもない事実。今後もこういった学会に参加して日々の臨床に活かせるように多くの事を吸収して参ります。
せっかくなので発表内容を御紹介致します。これもまた我々の仕事だったり致します。どんな業種でもそうなんでしょうけれど、どうあってもPCに苦手意識ってのがあってはなりませんね。
こういった発表文書を纏めたり、このHPの記述もそうですが、当然診療時間中にやってるわけではありません。その意味からすると大袈裟に言うと『寝てる時間と食事の時以外は仕事中!』って言っても過言ではないのかもしれませんです。
◆ 発表内容 ◆
インプラント上部構造作製時の『Atlantis abutments System』の優位性
Advantages of “Atlantis abutments System” when making implant superstructure
酒井 直樹 Naoki Sakai
日本臨床歯科CADCAM学会 東北支部 酒井歯科医院
キーワード/インプラント、アバットメント、CEREC、Atlantis
目 的
近年のCAD/CAM関連機器の進歩は著しく、その技術をフルに活用した各種システムの可能性には目をみはるものがある。
その中の一つであるインプラント上部構造製作システムは、自院での2014年のセレック導入と同時に使用を開始し、変遷はあるものの今でもその恩恵を受け続けている。すなわち、このシステムの導入により、多くの症例で従来のシリコン印象から解放され、精度が高く審美性にも優れた修復物を効率的に作製できるようになった。
今回は、『シロナコネクト』の提供と同時に導入したジンマー・バイオメット・デンタル社(旧3i)の『ENCODE® Impression System』から、2018年以降使用している『Atlantis abutments System』、この2種類のシステムを比較して、現用の『Atlantis abutments System』の優位性を、提供されるコアファイル・データの利便性・汎用性とともに検討したので報告する。
方 法
2014年に『ENCODE® Impression System』を臨床に導入し、光学印象並びシロナコネクトでのデータ送信を活用して、当時の先端技術でカスタムアバットメントを製作してきた。それは画期的なものではあったが、現用の『Atlantis abutments System』に比べるとはるかに手間を要した。このふたつの方法の相違点を実際の臨床例にて比較検討し供覧する。
結 果
光学印象時の優劣、その後の上部構造作製に至るステップを比較検討することで『Atlantis abutments System』の優位性が認められた。
また、ジンマー・バイオメット・デンタル社(旧3i)のインプラントに限らず、安価な印象パーツと数点のアクセサリーさえ確保すれば、他院での埋入、とりわけ海外からの帰国者の上部構造作製がインプラント・データを元に容易になった事も臨床上の大きなメリットかと考える。
考 察
患者の審美性に対する要求は増しており、可能な限りセメンティングへ移行する流れに際し、患者・術者双方の印象・製作・メインテナンスにおけるストレスも軽減されるシステム構築がなされたと考える。
『コアファイル』によりアバットメントが届く前に自院CAMでの上部構造製作が可能になり、精度を犠牲にせず時間短縮がなされ当院では有効活用に至っている。またdxdファイルとして提供されるデータをラボに送り、より複雑な症例を歯科技工士にオーダーすることも可能となり、上部構造作製時にも『Atlantis abutments System』の優位性と簡便性が感じられた。
執筆・監修歯科医
インプラントもDX化
理事長・院長
酒井直樹
SAKAI NAOKI
経歴
1980年 福島県立磐城高等学校卒業
1988年 東北大学歯学部卒業
1993年 酒井歯科医院開院
2020年 医療法人SDC設立 理事長就任
所属学会・勉強会
日本臨床歯科CADCAM学会
日本顎咬合学会
日本口育協会
日本歯科医師会
国際歯周内科学研究会
日本床矯正研究会
ドライマウス研究会
船井総研・矯正特化型歯科経営研究会
家族構成
妻と子供3人(一女二男)、長男は2019年から歯科医師
モットー
『努力は人を裏切らない』