治療に関すること

乳歯の歯内療法(根の処置)は案外難しい

どんな方にも乳歯の時代があったかと思われます。
生後7~8ヶ月でまずは下顎前歯から生え始めて、その後3歳前後に『上10本+下10本』の合計20本で乳歯列が完成
その後、これまた個人差はありますが、小学校の6年生頃までには全部で28本(親知らずを除く)の永久歯にチェンジ、実際にはその間の10年弱のお付き合いでしかないんですが、この乳歯・・・ひとたび大きなむし歯になれば治療は厄介だったりも致します。(泣)

考えてみますと低年齢の時にはビクともしなかった乳歯が脱落期にはグラグラになりますが、これは歯の根っこが吸収・・・つまりは確実に変形してしまうからに他なりません。
植木だってナンだって根が無くなればグラグラになり立って居られなくなり抜けやすくなりましょう。
そんな吸収を受けてしまう乳歯の根の処置は正直 困難を極めます。必要があれば幼稚園児に麻酔だってしますが、大人の方だって嫌がるんですから低年齢のお子さんが喜ぶはずもなく・・・思うようにいかない事ばかりなのはご理解もいただけましょう。

進行止めのお薬『サホライド』なんてのを耳にされたことはありませんでしょうか?
正式名称は『フッ化ジアミン銀』ですが、悪いところを中心に黒変してしまうという欠点があるのが難点でもありますが、コイツのう蝕(むし歯)進行抑制効果は抜群です。
ナニもせずに放置すると、乳歯の柔らかさ故にみるみるうちに崩壊してしまうのに対して、形状の維持を図る(歯の崩壊を防ぐ)ことには優れた薬剤とされ咬合の維持(噛めるようにする)のためには重宝致します。

もしくは当院でも多用するのですが、むし歯を削らずにいわゆるセメントってヤツを『取り敢えず詰めておく』って方法もあるんです。
フッ化物徐放性効果のある『グラスアイオノマーセメント』ってのがありまして、善し悪しは別にして5歳前のお子さんなんかに対しては治療が可能になるまでの『時間稼ぎ』にはなるように考えています。
いずれにしましても、そもそもがむし歯にならなければ問題はないわけですから、保険でも出来る定期的なフッ素塗布等で守ってもらえると宜しいように思います。

写真は歯科医師会雑誌掲載の生涯研修でテーマは『乳歯の歯内療法』、改めて自分が日頃 関わっているお子さんの乳歯治療に関して再確認が出来ました。

乳歯の歯内療法を行う際は,事前に小児患者の年齢,歯根の状態,永久歯胚の状態を確認しておくことが重要であり,そのためのデンタル X 線画像検査は永久歯を治療する時以上に不可欠である。
乳歯は永久歯とは異なる歯根形態を持ち,歯根吸収を起こしていることがしばしばあることも考慮して治療を行いたい。
治療後も永久歯への交換まで,異常が起きていないかを確認するために,やはり X 線画像撮影を定期的に行う必要がある。

日本歯科医師会雑誌・Vol.75 No.02 【クリニカル】乳歯の歯内療法 2022年5月号
酒井直樹

酒井直樹

医療法人SDC 酒井歯科医院 理事長 / 院長

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