転びたくて転ぶわけではない
高齢の方にとっては、転倒して骨折でもしようものならそれを契機に「寝たきり」になってしまう話をよく耳にします。事実、私の祖母がそうでした。
その理由として考えられることのひとつに、歯の喪失によってその確率が一気に増すとなると穏やかではいられませんでしょう。
転倒のリスクは2.5倍に
厚労省の調査によれば、『歯を失ったまま義歯(入れ歯)を仮に使わなければ、転倒のリスクは2.5倍に!』なるのだそうです。
65歳以上で19本以下の方(本来は28本)は2.5倍になってしまうらしいのですが、やはり歯を喪失してはなりませんし、仮にそうなったとしても咬合の維持安定の為にはどうあっても「入れ歯」や「インプラント」の必要性が生じてくるということです。
理由としては『臼歯の咬合の喪失に伴い脚力やバランス機能の低下につながることが報告されていて、歯や咀嚼筋から中枢に向かう神経が体のバランス機能と関連することが示唆されているから』だそうです。
19本以下ってのは実際どんな感じ?
単純に考えれば「28本-19本=9本」欠損で、相当に歯を失ってる方のイメージになりますが考え方によってはそう単純な話でも無いのです。
仮に4本の奥歯を失った方がいらっしゃったとします。その方は「どう考えても4本欠損」と思われがちですが、この方は上下で14組(上14本+下14本)あるはずの咬合が10組(上10本+下10本)しかないことを考えると、都合4組欠損ですから8本なくなっている20本残存の方と一緒になってしまいます。
それを考えると歯科医が日常臨床でお目にかかる頻度は随分多いケースということになります。
そもそもすべての歯が揃ってはいても歯並びの関係上、噛み合ってない歯がある方(写真参照)などは・・・奥歯の両側3組でしか噛んでなくてって方は結構いらっしゃいますが、その方は4組 8本でしか噛んでないことになってもしまうのです。(汗)
しかもその前歯が一切噛んでいないことに御本人が案外お気づきでない方も少なからずいらっしゃるのです。
たかが1本、されど1本
やはり生まれ持って備わっている天然歯はたったの1本であったとしても大事にしないとなりません。
ご高齢でも咬合がしっかり維持されている方は間違いなく「かくしゃく」となさっている方が多いです。
歯科医が感じている歯の残存歯数と御本人のバランス感覚や健康状態との関連性を多くの方に知っていただき、転倒防止のみならず健康維持に役立てていただきたいと考えます。
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